SHOXX


MALICE MIZER脱退直前の失踪騒動直後に初めて姿を現した雑誌。
この撮影は絵コンテもGackt自身が仕上げ、これからの自分という想いや姿を描いたもので
撮影の最中に「もう一回あらためて自分と向き合おう」と思うようになったそうです。
そして、このお話の内容は2期MALICE MIZER最後の曲となった『Le ciel』の続きとしてリンクしている、と。

たかが雑誌ですが、当時信頼出来る事務所がなかった彼にとって
ファンへ提示したい想いの表現を委ねたこの雑誌はオフィシャル同然だったように思えてならないのです。
ソロ活動に入ってからも、暫くはここで表現していたことを具現化することに尽くしていたように思うので
まずはこの雑誌の読解から入ろうと思います。
雑誌内インタビューでのGacktのコメントを紹介しながら、シーンごとに説明していきます。


シーン1:地上に堕ちる
MALICE MIZERであるGacktがその空間でうまくいかないことにより、マリスとしての自分から生まれ変わる。
それはマリスやメンバァやミゼラァを愛したり誇りに思う気持ちから遠ざかったのではない。


【霧の中に浮かぶ十字架に鎖が絡まっている図】
これは、磔(はりつけ)にされていた十字架から鎖を断ち切って逃げた跡で
「動けないまま死を待つという運命へ反逆」の始まりを意味しているように思います。
空気が悪くなったマリスメンバァとの間柄、事務所との揉め事。
その流れのままいけば行き場を失う…それはアーティスト神威楽斗としては死も同然と。
死を受け入れずに逃げたとも言えるし、やりたいことがあったからじっとしてる暇はないとも言える。
どっちにしても彼は用意された運命ではなく、自分の足で歩くことを選んだ訳です。
マリスじゃない僕は認めないっていう子たちはきっといると思う。
でも、僕はそれはそれで良いんじゃないかと思う。だって、その子がそう決めたんだから。
でね、これって実は僕がマリスに入った時に言ってたことと同じなんだよ。
“去っていくものをあえて引き留めることはしない”って。
僕は思うんだ。強制して人を引き留めたところで、そこには何も生まれないって。
誰しも自由であって欲しいしね。

つまり、Gacktは「何か」を生み出したかったから、自由を求めて場所を移ったわけです。


【森の中に倒れている傷だらけのGackt】
彼は……飛び立って、空に還ったわけではなく
そこから何かの力によって地上に堕ちたんだと思う。

つまり、元は飛べるだけの羽根を持っていたいうこと。
考えられるのは彷徨う者を死へ誘っていた『Le ciel』の妖精。
merveilles〜終焉と帰趨〜ツアァで羽ばたいていった続きがこのシーンなのだと。
では何故、堕ちたのか。
それは「誘われるままに(アーティストとしての)死へ導かれること」へ背いた罰。
自らが「ここにいられない」と波風を立てたのは、自由と代償の「罪」となるのです。
罰を与えるのは、他ならぬ「マリスじゃないGacktは認めないというファンの悪意」。
十字架にGacktを縛り付けていた鎖がそれなのではないかと想います。
引きちぎられた鎖はGacktに報いを求め、悲劇をもたらすことになった…と。
そこまで何かをしたいと言う気持ちの根源にあるのは
自分が探してるものを見つけたいからだろうね。
マリス・ミゼルって“人間とは…?”っていうテーマを持ってやってるじゃない。
僕にとっては生きてる限り…たとえマリス・ミゼルが活動休止になろうが何だろうが
これからも続いていくことであって。
じゃあ、それは何でなのかなってことを考えると
自分に対して真実でありたいっていうのが根本にあるのかなと思う。


【空を見上げる】
地に堕ちたGacktが目を覚まし、最初に見たのは上空。とても遠い目をしています。
きっと予想外の自体にハッとしてるんじゃないかな。
自分で選んだ自由だけれど、羽ばたいて舞い続けることが出来なかった。
=空気の悪かったところから離れてみたけど、格別に素晴らしい場所でもなかった。
空から堕ちて痛みを知った彼は
地上で人間と言う試練を感じた時に心で何を最初に感じるだろう、って考えた時に
“空から堕ちてきたなら空に近いところで何かを探しに行くんじゃないか”って思った。
孤独と痛みを正面から感じるために。

飛鳥が思うに、この時初めて自分が罪を犯したのだと大きく認識したんじゃないかな。
「リスクが伴うのは承知」と最初から分かっていても
痛みを味わって知る罪の大きさって、やっぱり事前よりも重いと思います。
そして敢えて「人間としての生まれ変わり」をテーマに掲げた理由は
もっと人間らしい感情を大切にして、生きてるということを感じたいのだと思いました。
それこそがこの先の“人間とは…?”の真髄なのではないかと。人間らしさとは何でしょう。


【空に向かって嘆く】
僕はマリス・ミゼルが好きだし、愛してるし、誰よりも大切に思ってる。
これは前と何も変わらない。
けども、事が進むにつれて各メンバーとも考え方とかに開きが出てきたっていうのは事実としてある。

少し前までいた『Le ciel』の世界が恋しいけど、飛び出してきてしまったものは戻れないし
そこにいるわけにいかない理由があるから飛び出したわけであって
悪い空気の中死を待つだけの場所には戻らない。
僕はそれでも空から堕ちたっていうことを悪く考えてはいないんだよ。
空から堕ちた、堕とされた、堕ちる運命にあった…言い方はいろいろあるのかもしれないけど
でも彼は堕ちなければずっと生も死も与えられなかったわけで
堕ちることで彼はあらたに人としての痛みとともに命を吹き込まれたわけだし。

悪く考えてはいないとは言うけど、悲しくないわけではなくて、淋しくないわけでもない。
あとこの構図はライヴ時によく叫ぶ「僕の声が聞こえるか」っていうシーンに似てるなと思いました。
つまり、彼が訴えている全ての想いは空へ届けたい声なんじゃないかと。
自分の姿や声…そういうもの全てを見て欲しい気持ちがあるような。
マリス時代のライヴでも言ってるセリフだけど、空をもといた場所と考えるとマリスを意味するんだろうな。
そして何より自分を縛り付けていた鎖たちへ、自分が引きちぎってしまった鎖たちへ。


シーン2:状況把握
脱退後、とりあえず現状把握。ほんの少しだけ頭を空にして「今」を生きることに目を向ける。
環境を変えて、自分の姿を見つめる…余裕のない精一杯の行動。


【地を這う】
どんなに空に叫んでも返答なんてなくて、少しずつ受け入れざるを得ない状況へ。
軽快に歩くことも、ましてや走ることも、かつてのように飛ぶことも出来ないけど
まずは「ずっとここにいるわけにはいかない」という悲観打破。
場所は変わっても、磔にされていた時と同じなのです。
納得出来る居心地のいい場所を求めて動く彼のスタイル。
Gacktの新たなる冒険はこうして始まります。


【扉を開く】
これはかなり分かりやすい構図になっていると思うんですが
次なる世界へ進むべく、自分の力で扉(門だけど)を開けたっていうシーン。
さっきまで這っていたのに
柵にしがみつきながらも、体勢を起こす変化が見られます。
つまり、ソロ活動に踏み出すのはそんな容易なことではなかったけれど
ずっと寝転んだり嘆いているわけにいかないから
苦しいけれど必死に新しい扉を開けたっていうことでしょう。


【扉の先に用意された部屋】
この部屋には新しい服と鏡と台のようなものがあります。
まるでGacktがここへ来るのを待っていたかのように。
これって多分新しい環境を意味するんだろうなと。
敷地自体は事務所、服は今までの世界とは違う自分を包むもの。
でも、ここには誰も人はいないんですよね。
つまり、Gacktがソロ活動をすることを望んでいた人なんていなかった。
でも包んでくれる服…理解しようとしてくれるファンはいたのだと。


【傷を確認する】
早速そこにあった服に着替えたGackt。
鏡に映った自分を見て、傷だらけであることに気がつきます。
覚悟していた傷ではなく、ふいに傷付いてしまった。
鎖を断ち切って羽ばたいた時には、まさかこうなるとは思っていなかった。
でも現実に自分の顔からは血が出ている。
人間に生まれ変わって初めて人として感じる痛みという感情を知った。
ここで1つ「人間らしさ」を手に入れたのです。


【鏡に映る自分を見る】
そんなにもじっと見つめるのは違和感があるからでしょうか。
傷付いた自分の姿を脳裏に刻み込んでいるのでしょうか。
その鏡に写るGacktはまだ笑顔という表情を知りません。
過去と夢と傷と痛みと行動力を持った「翼を失ったGackt」です。


シーン3:過去と未来を考える
ソロ活動に行き着くまでの気持ちの整理。未練との別れ。
歩いたことのない新しい道に進むのは怖いけど、還りたいからこそ進まなくてはいけない。


【じっと手を見る】
これからどうすべきなのか、この手で出来ることは何なのか。
色んなことが頭をぐるぐる巡ったのだろうと思います。でもあくまでも後悔をしない為に前向きに考える人。
僕の中では“ソロ/マリス・ミゼル”っていう分け方はあんまり考え方の中にないんだ。
そもそもマリス・ミゼルっていうもの自体が、5分の1を5つ足して1つにしていたものではないわけじゃない?
個々1人1人が自分の中にマリス・ミゼルっていう魂を常に含んでいる状態でいよう、っていうことは
メンバー全員が心の中に持っていたし。
そういう意味では、マリス・ミゼルは僕の体の一部であるし、これからも僕はそう思ってる。

マリスを見てた飛鳥はどうしても5分の1を5つ足して1つにしていたように思えてしまうのですが
このセリフは「別々に活動しても気持ちが離れるわけじゃない」ってことを言いたいだけで
1つのものを壊したり、剥ぎ取ったりするような痛いことをするわけじゃないんだよって意味かな。
「マリスがバラバラになっちゃう」という不安を持つ人全てに安心させたくて言った言葉かと。
Gackt自身も自分に言い聞かせ、そう思い込むことで不安を少しずつ排除しているような気がします。


【白い布を握り締める】
白い布は今まで自分を包んでいたもの…つまり過去の思い出。
たくさんの出来事、自分の想い、仲間の想い、自分に向けられる想い。
新しい扉を開けたものの、不安だらけのGacktには
揺るがない過去が恋しく思えたのかもしれません。
「今」が辛くて仕方ないと感じる時は、過去もいい思い出が目立つものです。
でも、脱いで暫く経った布は自分のぬくもりが少しずつ消え、冷たくなります。
そう…あくまでもそれは「過ぎ去ったもの」。


【布から注意がそれる】
そしてハッと今すべきことが何なのかと気付くのです。
一つだけ言えるのは彼らが僕の眼を見られるようになったら、その時は一緒にやれるはずだっていうこと。
単に、彼らが僕の眼を見られるようになるまで僕は僕のやれることをやろう、っていうことなんだから。

過去に捕われるだけじゃ、磔から逃げ出してきた意味がありません。
あくまでも目的があって自分の意志で羽ばたこうとしたのです。
羽ばたき続けることが出来ずに堕ちてしまったけど、もう1度空へ羽ばたこうと。
つまり、メンバァも自分も居心地よく居ることの出来るMALICE MIZERに向かおうと。
自分の眼を見て貰う為にすることがある、まだ出来ることがある…って。
僕は必ずみんな分かってくれるはずだって思ってる。


【少し遠ざかって布を見つめる】
未練がない訳じゃない。だけどずっと過去を抱き締めて動かないわけにはいかない。
たとえ、その先にあるのが死だったとしても、彼は前に歩くしかない。
そしてきっとさらに自分という存在の意味を感じるんだと思う。

やっぱり「人間らしさ」を求めて、自分が何故堕ちたのかを感じる為に歩き出すんですね。
今が嫌だから逃げるのではなく、未来への目的があるから。
3度目の悲観打破です。
しかし歩き出すからと言って、過去を捨てるわけではなく
自分が忘れることさえしなければ、抱えて歩いたりしなくても大丈夫だと。


シーン4:新しい世界に触れる
今までの環境を抜け出したことによって知る新しい発見の数々。
簡単に全てを手にすることは出来ないけど、知識を増やすことで恐怖を拭う。


【水に入る】
道を歩いていって辿り着いた場所その1っていうことですね。
山の中だから川か湖かな。
木に囲まれていたさっきまでの景色と違い
周りが見渡せてパーっと広がる解放感があるような。
不安いっぱいの中で、少し、自由の喜びを知ったとか。
自分がいた山と同じような山の存在も見えたり、きっと魚や鳥もいるでしょう。
今まで知ることのなかった平和で爽快な世界を1つ知って、きっと感動があった筈。


【自分の手で水をすくう】
きっとこれも初体験。
手にとろうとしても、指の隙間から零れてしまうものがあるんですね。
人間として生まれ変わって初めて知った摂理。
これは十字架から逃げ出した時と実は同じことなのです。
自由を掴もうとしたのに、掴みきれなかった。



【冷たさを感じる】
水を掴むことは出来なかったけど、触れた分だけ濡れるんですね。
簡単に全てを手にすることは出来ないけれど、実際触れてみれば少しは得られるのだということです。
そして水に触れたことにより、指がかじかむということを体験します。
その手を口元に持っていくのは人間としての本能なのでしょうか。
自分の力で何とか暖める術は、実は知っているんです。
到底それだけじゃホクホクするまでにはいかないけど
だからこそ「人間」が持つ温もりを求めるのかもしれません。


【何かに気付く】
何に気付いたのかな。明確に分からないけど、上に書いたようなことかな。
温もりが欲しいと思った時、それを得る為に何をしたらいいのかの答えを見つけたのかな。
Gacktの目線の先には何があるんでしょう。
同じこの寒さの中に生息する生き物はどうしているのかを見たのかな。
何かに気付いた時、彼は自分の指が冷たいことも忘れてしまうんですね。


【周りを見渡す】
鳥の囀りや木々の声を聞いたり、新しい世界には何があるのかを見渡しているのかな。
自分の知る世界と遠くにあるから前に進むのが怖かったけど
少しずつ覚えて恐怖をなくしていきます。
でも、一気に全てを知ることなんて出来なくて、意地悪をするかのように霧がかかっています。
近くのものしか見えない…つまり「知りたいのなら側においで」と。
何に対しても理解する為には側に寄らなくちゃいけないんですよね。
霧がかかれば自分の姿すらも霞んでいくような。


【足元を見つめる】
でも、大地だけは動かないのです。
見えなくても、そこにあることを常に感じることが出来るのです。
それは空にいた頃は気付けなかった新発見。
前後左右何も見えなくても、確実に自分を支えてくれるという安心感。


【空を見つめる】
でも、最初の時みたいに嘆きとか叫びではないんですね。
ぼんやりと見つめているだけで、何か目で語りかけているようにも見えます。
でも「周りを見渡す」「足元を見つめる」「空を見上げる」ときたら
このシーンの空は天井という意味なのかな。
距離的にはとても遠いし、壁のように分かりやすいものでもないけど
この世界は空に包まれているように感じたんじゃないかと。
自分の夢である空が、ちっぽけな自分を抱き締めてくれた。


【大地に頬を寄せる】
動くことなく自分を支えてくれる大地を愛しく思って、お返しのつもりで抱き締めているんじゃないかな。
自分が歩く道全てを、この先共にする大地。
安心感を持たせる何かを囁いたような気がして耳を澄ましているのかもしれません。
最初は大地に堕ちたことを嘆いたものの
ようやく受け入れることが出来るようになったんですね。
少し落ち着いたことによって、今まで見落としていた些細な温もりを感じることが出来るようになったような気がします。
それは勿論このお話に限らず、実生活の人間関係においても。


【歩き出す】
物語は続いているし、まだまだこれからなんだよ。
ここで敢えて後ろ姿なのは、あたしはGacktの先にいるわけじゃないからだと思います。
Gacktはこちらに向かって歩み寄ってくるのではなく
自分が前に進むことでその後姿を追わせようとしているような。
足を前に進めなくてはいけないのは、Gacktだけではないのです。
僕のことを感じてくれようとする人たち、見ようとしてくれる人たち、待ってくれる人たちに対しては
まず心から感動というかたちで応えたい。


【太陽に吠える】
正面が写ってるわけじゃないので、実際の表情はわからないけど。
磔の行く末が火炙りだったとしたら、本来炎には更なる恐怖心があるだろうに
無抵抗にも両手を広げているんですね。
そしてこの小さい画像だと見えませんが、左下には「fin」と書かれています。
今回表現したストーリーはここが最後のページではあるけど、あくまでも序章であり
これからが始まりなのだと。
このお話の中でも「ここから」っていうシーンが4回出てきていることを思うと
成し遂げたような気がしても、それはあくまでも次の始まりにすぎないって意味かな。
終わりも始まりも自分の気持ち次第で決まること。
Gacktはまだまだ自分の続きを作ろうとしているのです。
僕は僕であり、Camui Gacktだということ。まずはそれが伝わればいい。
全ては本当に、ここからだよ。



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